凜翔(りひと)との時間は楽しかった。本物の恋人ではないけど、そう錯覚してしまいそうになるくらいに。男の人を相手にしてあんなにも開放的な気分になれたのは久しぶり。

 そういえば、結局、凜翔のことは何も聞かなかった。せめて年齢くらい訊(き)いておけばよかったかな。もう二度と会うことはないんだから、考えても仕方ないだろうけど。


 帰宅すると、家の前で心晴(こはる)が待っていた。

「ひなたおかえり!今日はどうだった?」

「ありがとう。楽しかったよ。レンタル彼氏もいい人だったし」

「ホント!?よかったぁ!」

 凜翔とのデートがうまくいったのかどうか想像し、心晴は気をもんでいたらしい。私は改めて、彼女に感謝の気持ちを伝えた。

「ありがとう。心晴のおかげで久しぶりに楽しいデートができたよ。気分転換にもなった!」

 凜翔に会う前まで胸にあった重たいものが、今はなくなっている。晴れやかに笑う私を見て、心晴も察してくれた。

「吹っ切れたって感じだね」

「うん。深く考えることずっと避けてきたけど、優(ゆう)のこと真剣に考える勇気出てきた!」

「どんな答えを選んでも、ひなたが決めたことなら、あたし応援するから」

「ありがとう、心晴」

 その気持ちだけで充分だよ。とても心強い。心晴にはいつも、もらってばかりだ。

「決めたら、真っ先に話すね」

「無理しない程度に頑張ってね、ひなた」

 ありがとう。時間がかかってでも、答えを出すから。