その後、私への恋愛感情を再確認した昭は、凜翔と兄弟対決をすることになったらしい。
優と昭はまだ完全に元通りの関係とはいかないみたいだけど、学内で二人が一緒にいるのを見かけることが増えてホッとした。
二人は私のウワサを耳にするたび否定して回ってくれているそうで、そのうちじょじょに居づらい空気は消えていった。私が一度は付き合った彼らの言葉は、学生達にとって何よりも説得力があるらしい。
12月になってすぐ、紗希ちゃんは音楽大学へ転学しファミレスのバイトも辞めた。凜翔がいるからこの大学に来たものの、元々は音楽系の大学へ進みたかったそうだ。
引っ越してすぐ、心晴はイサキさんとの結婚が決まりこの土地に戻ってくることになった。心晴のお母さんもそれを喜んでくれているらしい。
紗希ちゃんがいなくなったことで、凜翔は再び軽音楽部に入り直し、引き続きキーボードを担当している。紗希ちゃんの後続として1年の新メンバーがボーカルをすることになったけど、凜翔はボーカルを抜いて人気メンバーとなった。
レンタル彼氏をやめてもなおモテ続ける凜翔にハラハラさせられるけど、告白されるたび凜翔は決まってこう言った。
「好きな子泣かせたくないから、女性とは連絡先交換しないことにしてるんだよ。ごめんね」
私にも向けられたことのあるそのセリフ。
あの時、凜翔の言葉の奥には、私に片想いしてくれていた彼の一途さが宿っていたんだと知った。
《完》


