違約金を払ったことについて、凜翔は何も言わなかったけど、私と付き合うことを店に言ったせいだと分かった。
「私とのこと黙ってれば、お金払わずに済んだかもしれないのに……」
「いいんだよ。元々あってないようなお金だったんだから。自分磨きがバイト最大の目的だったし」
「でも、違約金って高かったよね?実は、前に店のホームページで見てさ……」
「そっか、見られちゃったんだ」
凜翔はさほど気にしていないようだった。
「ごめんね。私が凜翔以外の人とデートしたりしたから……」
「そうさせてしまったのは俺だから、逆に謝りたいよ」
花火大会の会場は混雑しているのに、隣に座る凜翔の声は涼やかでよく通って聞こえる。
「でも、もう、他の人とデートなんてさせないから」
周囲の目も気にせず、凜翔はその腕を私の肩に回し、一瞬のキスをした。
「……凜翔っ!?今のって……」
「大好きだよ、ひなた」
「あ、ありがとうっ!でも、あの、そういうことじゃなくてね?ビックリしたっていうか……」
この前、シャワー上がりに何もなかったことを思い出し、今日の凜翔を意外に思った。驚きの分、胸は熱くなっている。
凜翔はそっと私の髪の毛をなでつけ、艶っぽい笑みを見せた。いつも穏やかで涼しげな瞳の奥に、欲情の色が見えた気がした。


