大学祭でのライブを最後に、凜翔は軽音楽部をやめた。メンバー達には残ってほしいと頼み込まれたらしいけど、紗希ちゃんが私に危害を加えたと分かった時点で、凜翔は退部の決意をしていたそうだ。
紗希ちゃんのことは他人事じゃないと思った。優が彼女に正論を突きつけた時、モヤモヤしたのはそのせい。優の言葉が心に突き刺さったからだ。
だからって、凜翔と紗希ちゃんを仲直りさせたいとは微塵も思わないけど。
良くも悪くも、それが恋。綺麗で汚くて、だけど守りたい感情ーー。
大学祭最終日の夜、近所の大型河川で花火が打ち上げられた。心晴はイサキさんと、私は凜翔と、四人並んで花火を見た。
花火を見上げている時、凜翔はバイトを辞めるまでの経緯を話してくれた。
偶然カフェで会った日、凜翔は高級料亭でお客さんを待たせていた。それにも関わらず私と過ごすことを優先し、結局凜翔から料亭デートをキャンセルしたのでお客さんが怒って店にクレームを入れたらしい。
そこで初めて、凜翔はお店の人の信用を失った。それでも解雇されずに済んだのは、上位の人気を得るタレントだったから。
しかし、優秀すぎる働きを見せる凜翔を妬むタレントはたくさんいた。その中の一人が、いつしか私が指名したカイトさんだった。
カイトさんは私とのレンタルデートを終えた後、凜翔が私に貢いでいるとか私と凜翔は体の関係でつながっているといった、ある事ない事を他の女性客に吹聴し、凜翔のイメージを落とそうとした。カイトさんとのデートで私が退屈してしまったことが彼のプライドを傷つけてしまったらしい。その上凜翔はカイトさんの常連客をも奪う人気ぶりだったので、なおさら彼の嫉妬心を膨らませた。
カイトさんに煽られ凜翔を付け回したり、ネットで凜翔を誹謗中傷するお客さんまで出てきた。このことを重く見た店側は、やむなく凜翔を解雇する方向で話をしてきたという。


