優も、昭も、心晴も、憐れみと軽蔑の眼差しで紗希ちゃんを見ていた。優は諭すように言葉を継いだ。
「未成年だから、女の子だから、君は見逃されてるだけで、根も葉もないウワサを言いふらすのは名誉毀損という立派な罪に当たるんだよ。親衛隊に実害受けてるから傷害罪もつくよね。ひなたは被害届なんて出さないだろうけど……。これだけは言わせてほしい。恋愛で傷ついたのは君だけじゃないよ」
優の言葉は、皆の言葉を代弁しているかのようだった。言いたいことを言ってもらえた、そのはずなのに、私の気持ちはスッキリしなかった。ずっと謎だったウワサの原因が分かったというのにーー。
紗希ちゃんの心に、優や私の気持ちがどれだけ届いたのか分からない。でも、それきり黙り込んだ彼女を、どうすることもできないと思った。
「ひなた、大丈夫?顔、真っ青だよ」
「うん……。平気。なんでもないから」
心配してくれる心晴に微笑を返すと、私は優と昭に尋ねた。
「一緒にいるってことは、二人、仲直りしたの?」
「いや?全然!」
答える両者の声が重なり、思わず笑ってしまった。口では否定してるけど、息ぴったりな感じがする。
ここへ来るまでのことを、昭が説明してくれた。
「さっきたまたまツレと豚汁食ってたら、紗希から『あの女シバく』ってメールが来て……。ひなたのこと言ってるの分かったから、ちょうど店番してた優も連れてきた」
「いきなり無言で腕引かれたからビックリしたよ」
「だってお前、俺がひなたと別れてから話しかけても無視するじゃん。豚汁買ってやったのにありがとうもないしさ。出店とはいえ店員ならもっと愛想良くいろよな」
「昭にだけは言われたくないよ。連れてくる前に一言くらい説明してくれても良かったと思うけど?」
「お前、せっかくモテるのにそういう細かいことばっか言ってると女寄り付かなくなるぜー?」
「忠告ありがとう。昭の半分でいいから俺にも軽さが必要だったのかもね」
「嫌味か?いい性格してんなー」
「お互い様でしょ」
親友同士だっただけあって、二人の言い合いはやっぱり、親しかった歴史を感じさせる。また前みたいに仲のいい友達に戻るのも間近なんじゃないかと思えた。


