レンタル彼氏–恋策–


 軽音楽部の活動が終わるとメンバーで飲みに行くこともしょっちゅうある。紗希ちゃんはソフトドリンクにお酒を混ぜた物を凜翔に飲ませ、恋愛に関する雑談を振った。凜翔の恋愛事情を聞き出すための作り話だ。

 知らず知らずお酒を飲まされていた凜翔は気を緩ませ、普段ははぐらかすような突っ込んだ質問にも答えていた。

 年上の初恋相手って誰??ーー尋ねると、凜翔は答えた。

『兄の彼女……。ひなた、今、幸せかな…?』

 正気のようで酔っている凜翔の幸せそうで切なげな声音を、紗希ちゃんは忘れないと言った。

 凜翔の恋愛相手を知った後日。軽音楽部のメンバーと凜翔の家に行く機会を得た紗希ちゃんは、わざと昭に近付いた。紗希ちゃんの狙い通り、昭は彼女の甘い誘惑に引っかかり私は振られることになった……。

 紗希ちゃんの本音を知って、何とも言えない気持ちになった。

 優が紗希ちゃんに尋ねた。

「違ったらごめんね。……もしかして、大学でひなたの妙なウワサ広めたのは君?時期も合ってるし、そういう話聞いてたらそうかなって思って」

「だったら悪い?」

 紗希ちゃんは悪びれることなく優を睨みつけ、乱暴に私を指差した。

「相馬さんと付き合ってるのに凜翔に傾いたこの人が悪いんだ!男好きもウソじゃないじゃん!私は悪くない!なんでそんな目で見られなきゃいけないの!?」