レンタル彼氏–恋策–


 返す言葉を失ったものの、紗希ちゃんはそのまま引き下がるのも悔しいといった様子でそこに立ちつくす。

 そこへ、よく知る人物が二人もやってきた。昭と優だ。

 彼らは同時に「打ちのめされたー」と言い、紗希ちゃんの視線を遮るように私の前に立った。放心する心晴と顔を見合わせ、私は目をしばたかせる。

「紗希はさ、ひなたが凜翔を想うくらい俺のこと好きだったか?」

「好きだよ!だから、彼女いるの分かってて告白したんだよ……」

「ううん、違う。本当のこと言えよ。お前は意地になってるだけだ。本命の凜翔に振り向かれないのが分かってたから」

 昭の言葉に、その場の全員が凍りついた。紗希ちゃんは、昭ではなく凜翔のことが好きだったらしい。同じ高校の音楽科に入った頃からずっと。

「……そうだよ。友達としてはいいけど、昭なんて本当は好きじゃない。凜翔の好きな女が…この女が悲しめばいいと思って近付いただけだよ…!悪い!?」

 それから紗希ちゃんは、開き直ったかのように事情を話した。感情的に話すので所々聞き取りづらくもあったが、こういうことだった。

 高校時代から謎の多かった凜翔。音楽科に属するという以外、紗希ちゃんは凜翔と接点がなく、ようやく話せるようになったのは凜翔を追うように同じ大学の軽音楽部に入ってからだった。

 紗希ちゃんは昔から好きになった男子を振り向かせるスペックがあったし、自分でもモテることを自覚していたので、部活を通して会話が増えるうち、凜翔のことも振り向かせられると思っていた。だけど、どれだけ経っても凜翔は振り向いてくれそうにない。

 彼がレンタル彼氏のバイトをしていることを知っていた紗希ちゃんは、凜翔の好きな人を突き止めるため店のホームページを探し彼のプロフィールを見た。そこで凜翔の初恋経験を知った。