自分でも少しテンパっているのが分かる。不自然にならないよう明るく会話をつないでいると、優はこちらの気持ちを探るように微笑した。
「凜翔君とうまくいったみたいだね」
「え!?いや、それは、あの……」
「声のトーンで分かるよ。おめでとう」
「……ごめんね」
優の気持ちに応えられなかったクセに、あっさり他の人を好きになってしまった。
「知ってたんだね、優は。昭が色んな人と遊んでたこと」
「凜翔君に聞いたんだね」
「……うん」
「そんな顔しないで。うらやましくなるくらい幸せなとこ見せてくれなきゃ、俺が手を離した意味ないでしょ?」
うつむく私の頭を、優はそっと撫でた。付き合っていた時の触れ方とは違う、妹をあやすお兄ちゃんみたいな撫で方だった。
「よかった。ひなたの幸せを見届けられて」
「優……」
本当にもう、優とは終わったんだなと思った。そのことに後悔はないのに、もの寂しさを感じた。
まだもう少し何か話していたい気がしたけど、豚汁を買いに来たお客さんと心晴が同時に飲食席へ来たので、優も私も、席を立たなければいけなくなった。
「また来てね。心晴ちゃんも!」
「ありがとう優君。ごちそうさまでした」
私達が出て行くと同時に、バスケ同好会の出店は混雑し始めた。


