「凜翔君の部屋、どうだった?」
「ドキドキしたよ、やっぱり」
「さっそく進展あったり!?」
「し、進展!?」
「付き合うことになったなら、これから好きな時に会えるね。連絡先も交換したんだし」
「そう!大進展だよ。今まではいつ会えるか分からない、謎のレンタル彼氏だったからね。ドライブも買い物も食事も全部手探り状態だったし」
自分の恋愛みたいに楽しく話す心晴の調子に合わせつつ、私は内心気後れしていた。付き合うことにはなったけど、凜翔との関係はまだこれといって進展していないから。
親衛隊に襲われた時に汚れた髪を洗うため、あの後凜翔はシャワーを勧めてくれた。だけど、その後恋人らしい触れ合いは一切なかった。凜翔のピアノ演奏を聴いたり大学の話で盛り上がって、それはそれで楽しくはあったんだけど。
好きな人の家でシャワーを浴びる。その後に訪れる甘いシチュエーションを過剰なほど期待していた。勝手な妄想で盛り上がった私が悪い。でも、それが実現しないことで凜翔との間に壁があるように感じ、少し寂しくなったのもたしか。
「せっかく付き合えることになったのに、寂しく思うのって変だよね……。凜翔の気持ち知らなかった今までの状態と比べたら断然幸せなはずなのに」
心の内を口に出すと、心晴はうなずき同調してくれた。
「分かるよ。相手と自分の気持ちの高まり方が違うっていうか、温度差を感じる時ってあるよね」
「そう、そうなの!」


