信号待ちになり、心晴はうつむいた。

「うん……。ひなたと昭君が別れた後くらいに、ひなたに会いに大学行ったら駐車場でたまたま優君と会って、昭君はすごい女癖悪いって教えられて……。優君、だいぶ前からそのこと知ってたみたいなんだけど、ひなたには教えられないって胸痛めてた」

 先日の電話で優が言っていたことを思い出した。思い悩む価値、昭にはないって。そういうことだったんだ。優が言葉をにごした理由が分かった。どこまで優しいんだろう……。

「昭にヨリ戻したいって言われた。断ったけど」

「マジで!?ありえない!!」

 それまでしんみりしていた心晴は興奮し、アクセルを踏む足にも力が入っている。

「紗希(さき)ちゃんともうまくいってないんだって。だから寂しくなったのかも」

「そんなの自業自得だよ!ひなた、昭君に戻るなんて絶対ダメだよ!」

「大丈夫、分かってるから」

 それに、私は凜翔だけが大好き。他の人へ行くなんて、もう考えられない。

 凜翔のことを想うだけで自然と頬が緩んでしまう。私の様子を見た心晴は、満足げに言った。

「そうだよね。ひなたには凜翔君がいるもん。昭君なんて目じゃないよね」

「うん。もう、何のこだわりもなく接するよ、昭とは」

「バイトも学校も一緒だし、それがいいよね」

 木枯らしの匂いがしそうな外と違い、車内の空気は春みたいに穏やかな色に変わっていく。