紗希ちゃんだけじゃない。世の中には、昭の心変わりを促すような可愛い子がいっぱいいる。それこそ、私以上に魅力的な人なんて数えたらキリがない。

「だから、もう、罪悪感とか持たなくていいよ。私ももう、昭のこと何とも思ってないし……」

「……ううん。それだけじゃない。紗希から昭のこと相談された時、俺、こう言ったんだ。『彼女とうまくいってないみたいだから、頑張れば奪えるかもよ』って。真に受けた紗希はその通り昭を押した。俺が何も言わなければ、紗希はあそこまでしなかったかもしれない」

 紗希ちゃんを動かしてしまったことの後悔を感じる一方で、凜翔はこうも思ったらしい。……不誠実なことばかりして大切にできないなら、昭からひなたを奪ってもいいよね?……

 とても信じられなくて、私はポカンとしてしまう。

「凜翔が……?そんなこと言うイメージないよ」

「そう?ひなたが思う以上に狡猾(こうかつ)なんだよ。昭に対して『紗希と付き合ってひなたの大切さを思い知って後悔すればいい』とも思った」

「……」

「この前紗希がひなたに突っかかったのも俺のせい。紗希の恋愛事情なんてかまわず俺が自己中な助言したから、紗希は昭とうまくいってない。それで、八つ当たり的にひなたを攻撃したんだと思う。昭絡みの件でひなたが嫌な思いしたのは全部、俺のせいなんだよ……」

 うつくむ凜翔の声が弱々しい。今まで誰にも言えなくて苦しかったんだと思う。私が抱えるはずだったものを、凜翔は人知れず抱えていたんだ。