レンタル彼氏–恋策–


 じりじり迫ってくる彼女達を見つめ隙を伺うが、段ボールにぶつけた背中が痛み座り込んだままになってしまう。一番背の低い子が、あらかじめ用意していた砂入りのペットボトルを開け、私の頭めがけてそれをこぼした。

「っ!」

 水と砂、半々に混ざった汚水が頭から全身を伝い、寒さで体が震えた。髪もザラザラして土臭くなる。

「相馬君は誰とも付き合わなかったのに、アンタのせいで私は振られた!」

「私もだよ!」

 こんな中学生のイジメみたいなこと、この歳になってする人がいるなんて……。情けなくて、悲しくて、抵抗する気が失せてくる。

 彼女達は、優のことをよっぽど好きだったんだろう。私に嫉妬するのも仕方ないのかもしれない。でも、どうしてこんなことをするんだろう?やっぱり納得できなかった。

 私も悪い。だけど、だからって彼女達にストレス発散の的にされる理由にはならないはずだ。そう思うとフツフツと怒りが湧いてきて、無意識のうちに言葉が出た。

「こんなことして好きな人が振り向いてくれると思ってる?そんなの、あるわけないじゃん……」

「ーーコイツ、開き直り!?」

「いいよね、そうやって発散できる人は……。そもそも、優のことなんてたいして好きじゃなかったんじゃない?自分が一番なんでしょ?」