レンタル彼氏–恋策–


 デート料金は基本振り込みで前払いするのでカイトさんとはこのままサヨナラしても何の問題もないが、なぜ昭にこんなことをされなければいけないのか分からなかった。

「手、離して。話って何?」

「お前、バイト先でもあからさまに避けすぎ。今日だってバイト休んで男と会ってるって、どういうつもりだよ」

「バイトサボったことは悪いと思ってる。店長達に対しては。でも、昭に責められる理由が分からない。私達もう終わってるのに。それに、今日のバイトは昭だって入ってたはず。サボったのはお互いさまじゃん!」

「バイトは行ったけど、店長にワケ話して抜け出してきたんだよ。お前が休んだの多分俺のせいだから、話して説得してくるって言ったら分かってくれてさ。……別れた後も普通にしゃべってくれてたじゃん。なのに、紗希が入ってきてから避けるってレベルじゃなくなったから……。仕事やりづらくて仕方ないんだけど」
 
 聞いているうちに腹が立ってきた。昭が紗希ちゃんと付き合ったことでこっちも色々やりづらいのは同じなのに、どうしてこっちばかりここまで言われなきゃいけないんだろう。

「仕事に必要な会話はしてるし、用件だってちゃんと伝えてるよね?それ以上どうしろっていうの?紗希ちゃんの前でニコニコして昭にも愛想よくしろって?」

「違う!俺はただ……」

「そっちの都合ばっかり押し付けないでくれる?で、元カノに理想語るのもやめて。私には昭の望み叶える義理もないし、言うこと聞く気もないから!じゃ」

 ムシャクシャした気分で立ち去ろうとすると、昭に強く抱き寄せられた。

「離してよ!こんなとこで何考えてんの!?」

「誰もこねえよ、こんな裏路地」

「そういう問題じゃないっ!昭には紗希ちゃんがいるよね?元カノに抱きつくとかバカなの?もし私があの子に刺されるようなことがあったら昭のせいだからね!?」

「いいよ。俺のせいにしたら?」

「は!?そんなん嫌だし!」

 ワケがわからない!思い切り身をよじっても、昭は私を離してくれなかった。