その時、更衣室の扉が勢いよく開いた。飛び込んできたのは昭だった。

「ちょ!ここ女子更衣室!」

「いいじゃん、着替え終わってるみたいだし!」

 悪びれなくヘラヘラする昭を見て、脱力した。空気の読めない人だ……。

 私が呆れているのに気付いているのかいないのか、昭はひょうきんに言う。

「それより、二人が更衣室にいるかもって店長に聞いて、焦ったって!」

「それで慌てて来たの?」

「だって、なあ?」

 「なあ?」じゃねえよ。心の中でツッコんでいると、紗希ちゃんがか弱い表情で昭の胸に飛び込み、猫なで声を出した。

「このおばさんこわい!私まだ入ったばかりなのに、さっそくいじめてくるんだよ?昭、先輩でしょ?助けてよぉ……」

「紗希、おいっ…!」

 戸惑いつつも昭はまんざらじゃなさそうに紗希ちゃんの頭をなでる。その姿を見て、体中をめぐる熱いものがサーッと冷めていった。二人が仲良くしている姿を見たら心底ショックを受けるだろうと思っていたのに、そうでもなかった。

 ……って、え?おばさんって私のこと?たしかに、紗希ちゃんより年上ではあるけど、世間的に若者に分類されるはずだ。口が悪いにもほどがある。世の中の21歳に謝れ!

 イラっとした直後、呆れた。本人にはどうにもできない部分を悪く言うことで攻撃して優越感に浸る彼女の愚かさに。