今日は木下先生に会わないと良いな。
会っても話しかけられないと良いな。

そんなことを考えながら学校へ向かう。

「……なにこれ。」

下駄箱で上履きに履き替え用としたとき、私の上履きの上に紙が置いてあった。
嫌な予感がしながらも開いて読む。

『今日の放課後、生徒指導室で待っている。木下春日』

手紙の文を読んで驚いた。
そして嫌な予感は的中した。
行きたくない。
そのまま帰ろうかと思った。
でも、できなかった。


放課後。
生徒指導室に向かう。
少しの吐き気を感じながらも少しずつ近づいてくる生徒指導室。

コンコンコン

ドアをノックするが返事がない。
不思議に思いながらもドアを開けた。

『おぉ、ちゃんと来ましたね。』

表verと思われる口調を使い、爽やかな笑顔で私を迎えた。

気味が悪い。

これが私の印象だ。

「なにか用ですか?」

私は強気な態度で聞く。
その瞬間、また昨日みたいに冷気が漂った。裏verになる。直感で感じた。

『なにか用ですかじゃねぇよ。昨日はよくも途中で逃げたな。』

予想通り。ピシャリと言われた。

『昨日の話の続きだけど、お前努力したことあんの?』

嫌な話。踏み込まれたくない話。
私は答えたくなかった。

「先生に言う義務はないと思います。これ以上踏み込まないでください。」

はっきり言った。先生は一瞬眉をしかめた。驚いたような顔もしていた。

『こっちはお前の態度のせいでイラついてんだ。迷惑してんだよ。言う義務はあんじゃねぇの?』

しつこい。
ただその一言しか頭に浮かばなかった。

「踏み込まれたくないって言ってるんです。これ以上は時間の無駄です。帰ります。さようなら。」

それだけ言って去ろうとした。

「いたっ!」

後ろを向いた瞬間。
一瞬なにが起きたかすぐには理解できなかった。痛い。腕に痛みがあることしかわからない。

『お前さ。踏み込まれたくないですで済むと思ってんの。答えれば済むことなのになんでまた逃げようとするわけ。』

腕を思いっきり掴まれて、壁に押し付けられている。
これが理解できた数秒後に、やっと先生の言ったことを理解できた。それぐらい先生の力は強かった。

「先生…痛いです。」

だからなんだとでも言いたげな顔で私を睨みつける。
追い詰められた。
今の私はそれしか頭に浮かばなかった。