「で、あるからして…………」




黒板には今度の期末で出されるだろう問題が書かれている。




少年は苦手な数学から校庭へと視線を向ける。





(後ろの席で窓側ってほんとラッキーだよな)





少年はすっかり他のクラスで行われている体育のサッカーに夢中になった。





(おっ、そこだ!そこ!よっしゃ得点入った!)





自分も早く体育の授業にならないかなど考えているとバシッと教卓が叩かれる音がした。





「山本和成(やまもとかずなり)…………俺の授業は分かりすぎてつまらないか?」




まあ、授業中にサッカー観戦など許させる筈もなく。





気づけば通称、鬼の前田(まえだ)にギロリと睨まれていた。




数学教師の五十代の前田は怒らせると恐ろしい。





「山本、この問題解いて貰おうかぁ?」




引きつった笑顔がまだ恐ろしい。




「は、はい………………」




前田に釣られ和成も引きつった笑顔を浮かべる。