そして、その樹は懸命に今日(こんにち)まで生きてきました。


戦争はこの国からなくなりました。

もう悲しい事は何もない…はずでした。


樹は新たな悲しみを抱えていたのです。


それは…虐待というものでした。


樹は始め、何をしているのかわかりませんでした。

子供が酷く傷ついているのも、苦しんでいるのも

まさか親のせいとは思いませんでしたから。

しかし、段々とそれを理解する事が出来るようになりました。


そして、樹はこう思うようになったのです。


昔はこんな事なかった。皆、自分の子供を愛してやまなかった。

なのに、何故こんな事が起きるんだろう…

あの子達を救いたい…

でも…ただの樹である自分には何も出来ない…


樹は毎日毎日そんな事を考えていたのです。