光の中を抜けると、二人、闇に包まれる。

皆私たちが離れたことに気付かず、花火にはしゃいでいる。

その声が次第に遠くなるに連れ、先生と私、ふたりきりになってしまったことを余計に意識させられる。



不意に先生が沈んだ声で言う。



「ごめんな。やっぱ南条に手伝わせなきゃ良かった。」



先生の申し訳なさそうな表情に心が痛む。



「ううん、私が勝手にやったから。」

「それを監督するのが俺の仕事なのになぁ…」



建物脇の目立たないところにある流し場に着き、先生が蛇口を捻る。

そしてもう一度

「ごめんな…」

と悲しそうな声で言った。



(そんなこと…言わないで?)



私の右手を流水に浸そうと先生が手を握る力を弱める。

その拍子に、私は先生の手からするりと逃れた。



そしてその逃れた右手で先生の左腕を掴む。



「南、条?」



私は少しだけ背伸びして、先生の端正な横顔に囁いた。