あれは確か雨がぱらつく日だったから、中間試験が終わった梅雨の頃だった。
英語教室から準備室の扉を開けて中に入ろうとすると、足元の「何か」に蹴躓いた。
思わず
「うわ…」
と声を上げると、「何か」も
「キャッ!」
と悲鳴を上げた。
(人?)
慌てて体制を立て直すと、辛うじてその人を踏まずに済んだが、傍に積まれたDVD の山を蹴り飛ばした。
DVDはガシャンと音を立て、バラバラに散らばる。
「あ!ごめん!」
うずくまるその人にすぐさま寄り添う。
(映研の南条さんだ。)
英語教室で活動している映画研究部の高校3年生で、話したことはないが顔見知りの生徒だった。
「大丈夫だった?南条さん。」
「先生、私の名前…知ってるの?」
その人─南条舞奈は甚だ驚いた顔をした。
「映研の南条さん、でしょ?
怪我はない?」
「…はい。」
「ごめんな、蹴飛ばしちゃって。」
俺がDVDケースを拾い集めると、南条がそれを順番に並べる。
「一番上?」
棚の上段にしまおうと立ち上がって手を伸ばすと、
「先生、届きます?」
と南条が言った。
「失礼だなー。届くよ。」
どんだけ小さいと思ってんの?
英語教室から準備室の扉を開けて中に入ろうとすると、足元の「何か」に蹴躓いた。
思わず
「うわ…」
と声を上げると、「何か」も
「キャッ!」
と悲鳴を上げた。
(人?)
慌てて体制を立て直すと、辛うじてその人を踏まずに済んだが、傍に積まれたDVD の山を蹴り飛ばした。
DVDはガシャンと音を立て、バラバラに散らばる。
「あ!ごめん!」
うずくまるその人にすぐさま寄り添う。
(映研の南条さんだ。)
英語教室で活動している映画研究部の高校3年生で、話したことはないが顔見知りの生徒だった。
「大丈夫だった?南条さん。」
「先生、私の名前…知ってるの?」
その人─南条舞奈は甚だ驚いた顔をした。
「映研の南条さん、でしょ?
怪我はない?」
「…はい。」
「ごめんな、蹴飛ばしちゃって。」
俺がDVDケースを拾い集めると、南条がそれを順番に並べる。
「一番上?」
棚の上段にしまおうと立ち上がって手を伸ばすと、
「先生、届きます?」
と南条が言った。
「失礼だなー。届くよ。」
どんだけ小さいと思ってんの?

