あの依頼者は蝶々という名前らしい
その蝶々さんに協力して貰って潜入した
のまでは良かったんだけど!
姐さんについてお酌をする為お座敷に一応座る事に
ごめんなさい、はじめさんの約束直ぐに破るハメになりました。
「櫻ちゃんは肌が白いから白粉要らないかもねえ。」
そんな姐さん方の言葉が凄く懐かしかった
男世帯で色気なし、紅一点所か男勝りに育った私がそんな言葉に触れるのは母がなくなってからぶりだっから懐かしくて油断すれば涙が零れそうだった。
化粧をしてくれるのが私の姐さんらしくて蝶々さんは微笑みながら私の姿を見ていた。


「できた、これだけの出来なら直ぐに売れちまうよ。」

そう言ってくれるのは嬉しいけれど、こちらはそんなまったりこいてる暇は無いから情報収集を急ごうと早速まずは姐さんに聞き込みをしてみた。
「姐さんはここの店主に拾ってもらったのですか?」
ああ、そうだよ。と歩きながら言う姐さんの項は妙な色気があって、女の人はこうまで努力しているのかと感心した。
一つ一つの仕草や動作に細心の注意を払っていて毎度毎度考えさせられる。
「そんな難しい顔してんじゃないよ。せっかくの美人さんが台無しさ。」
フッと笑う姉さんに昔の母を重ね、素直になれた。
お座敷につくと今まで奉行所で培ったお酌の作法を思い出し、一つ一つに丁寧にかつ迅速に行う。
最初のお座敷はお酌だけど聞いていたけれど姐さんは本当に何も喋らずただ綺麗に佇み時折笑みを浮かべるだけだった。
それなのに姐さんは男達に囲まれるほどの人気で、凄いとまた感心した
そのうち他のお客に呼ばれたのかここの座敷を私達に預け新たなところに直ぐに行ってしまった。
静かにお酒を注ぎ、お客に合わせ少し姉さんの真似して笑う
本当に遊女になった気分だ
嬉しいことにお客は直ぐに夜の街に消えて行った。
「あら、帰っちまったかい。」
姐さんが顔を出した時には既に居なくなった後、姐さんは稼げる客がとため息をつくと別の座敷に私たちを連れて行った
その最中、障子の向こうから嫌な悲鳴
まるで断末魔のような叫びを小さくあげる方を見ると姐さんが少し開いた障子を閉めた
「見世物じゃないよ、指を切って贈るのさ。」
その言葉とほぼ同時に障子の向こう側に血が飛び散った
同心とはいえ、私はあまりに残酷な光景に障子越しなのにも関わらず目を細めた
「ほら、行くよ。」
姐さんの凛とした声でハッと我に帰り姐さんの後ろを禿たちとついて行く。
話によると爪や指、髪の毛などを贈り私は貴方だけの物だという証を立てるのだという。
たかが遊女と心の何処かで卑下していた自分が後ろめたくなった
座敷に着くことも何事もなく順調に進みいつしか店は閉店時刻になっていた。
「うちは店を少ししか開けないからね、あまり泊まる客が少ないのさ。」
と姐さんが言っていたのを思い出す。
時刻はもう既に丑三つ時、何時もならとっくに寝ているこの時間に目を伏せそうになる。
だがしかし、今私が手に入れたのは指を切り落とす残酷な行為くらい
取り敢えず店の中を回る、見廻りで培った観察眼でさり気なく探す
日常の何気なくやっていたことが役に立っている気がして喜々とした。
「ほう、新たな娘か。」
黒い着物に身を包みおぞましい雰囲気を醸し出すこの人が店主、
「お初にお目にかかります。蝶々さんのお心遣いを受け此処に「堅いな、少し緊張を解きなさい。折角の美人さんが台無しだ。」
そう言うと私の頭をポンポンと撫でて行ったその優しい人が店主だとは思えなかった、なんだか父上に似て優しい人だった。
本当にこの人達が子供をおろすなんて酷い真似するのだろうか。
その日は1日聞き回ったが店主についての悪い噂は全く出てきやしなかった。