「…き、ゆき」


彼の声で目を覚ます。

よく夢に見る小学生の頃の道徳の授業。あれからも違和感は拭われないまま誤魔化すように対人関係をこなし、成人を迎えた。

学業を全うし、仕事も敢えて接客業を選び、彼とはその職場で出会った。嘘がなく純粋で子供みたいに表情豊かなひと。


「また嫌な夢を見た?」

ううん、と首を振ると安心したように笑う彼。


「じゃあ、いってきます」

「いってらっしゃい」


こう見送れるまでに2年掛かった。