「光星、お母さんは孫が沢山いてうれしいけれど、茜ちゃんは大変よ。年子で三人も。まったく考えなしなんだから」
「もう、三人で終わり」

平然と話しているが、私は、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
子供を作る行為があってこその子宝だ。
それが年子となると、待ってたとばかりに、その行為をしたことになるような気がしてならない。考え過ぎだろうか。
二人目までは、特に何も思わなかったが、さすがに三人目の妊娠時には、先の事を考えると、頭が痛くなった。
女の子とはいっても、手のかかる子供が二人いて、すぐに三人目だ。今でも疲れてしまうのに、この先どうなってしまうのだろう。
もちろん、嬉しくて、涙が出た。だけど、これとはまた別の話だ。見方によっては、「三つ子」に見られやしないか。
橘君は、菖、杏の時と同様に、子供のようにはしゃぎ、喜びを身体全体で表現した。
私たちは、身体の繋がりまで行くのも時間がかかった。
それは全て私のせいだ。
求められ、拒んだことではなく、会いたいのに、会いたくないとそんなことを繰り返して、日々が過ぎて行ったのだ。
心が一つになってプロポーズを受けた日からすぐに、その日がきた。
自然と私は橘君を求め、橘君は私を求めてくれた。
獣医としての会合か、学会だったかが京都であり、週末を利用して一緒に行った。
そこで橘君が予約した旅館で、橘君の肌に触れ、温もりを感じた。
離れの完全個室で、露天風呂もついてかなり、高額な出費だっただろう。
男の人のプライドもあるだろう。金額のことは聞かなかった。
ただ、「ありがとう」と言った。

「怖い?」
「ううん」

恥ずかしさはあったけれど、怖いということは全くなかった。
人が肌に触れたいと思うことは自然なことなのだと思った。嫌らしいなどと思うことは全くなく、キスがしたいと思うのと同じような感覚で、抱いてほしいと思ったのだ。
それは、早急にせかすような感覚だった。

「俺を幸せにしてくれるのは、黒川だけだから」
「うん」
「一緒に歩んでいけることを幸せに思ってる。愛してるよ」
「わたしも」

その日は満月で、月明かりだけで十分な明るさだった。
和洋室の寝室のベッドで、その月を見た。

その月を一生忘れない。

「茜の中は温かい……」

抱きしめて、耳元で艶のある声で彼が言う。
彼が私で感じてくれている。
そのことが嬉しい。こういう関係になるまでは、胸が大きくないとか、形とか、もう耳年魔になって気になって、気になって仕方がなかったけれど、ばかなことだったと思った。