そう言うのは、結婚写真だ。
身内のいない私に気遣い、結婚式は家族だけでひっそりと沖縄で行った。橘君も親戚や友達を呼びたかっただろうけれど、橘君の弟とご両親だけの温かな挙式だった。
お義母さんはずっと私に付き添ってくれ、泣きっぱなしだった。
そんな温かな家族が私にも作ることが出来るなんて、想像もしていなかった。
海外に行きたいという、お義母さんに、「病院を長く留守に出来ないのはわかっているだろう?」とお義父さんに説得され、沖縄を妥協案にした。
結婚式はしなくていいという私に、

「茜ちゃんをちゃんとお嫁さんにするのが私の役目」

と、お義母さんがいい、ありがたく受けることにした。

「すらっと、スタイルのいい身体にマーメイドラインのドレスが海に映えて、とても綺麗だった。それに……こんなにきれいで、どうしようか、本当に俺の嫁さんになってくれるのだろうか、土壇場で逃げちゃったりしないだろうかって、ずっと不安だった」
「それは私のほうなのに」

沖縄は思い出の場所でもあった。
「一人修学旅行」をした場所でもあり、彼が大切に保管していたお土産の場所でもある。
全員で、長期の休みを取ることは難しく、私と、橘君だけ先に出発して、残された彼の家族は、式の前日に沖縄入りすることになった。
10月の頭に式の日取りを決め、準備に取り掛かる。
勤めていた会社は、結婚が決まると同時に退職して、病院の手伝いをしながら、勉強をした。
病院は順調に改築が始まり、家族は近くの賃貸マンションに住み、橘君は、私のアパートで暮らした。
ウエディングドレスに憧れがなかったわけじゃないけれど、着ることはないだろうと思っていた。
お義母さんは、雑誌を買い込み、私よりも真剣にドレス選びをした。

「どうしましょう。どれも似合うわ」

もう試着をしすぎて、どれが良かったのか分からなくなっていた。
子供の頃は、絵本のシンデレラのドレスがとても好きで、お嫁さんになるならこのデザインがいいと思ったものだが、年齢も重ねると、可愛すぎではないかと思ってしまう。

「茜ちゃん、私、これが一番似合うと思うわ」

アドバイザーの方と試着した写真を見ながら、お義母さんが決定したのは、新着のドレスで、アイボリーのマーメイドラインのドレスだった。
オフショルダーで裾は後ろが長く引きずり、パールが波のように裾を埋め尽くされたデザインだった。
厭らしい話だが、私は、一人で生きていくために、貯金と投資をしっかりとして、貯えがあった。
お祝い事に縁遠く、成人式の振袖も着て来なかった。だからウエディングドレスに投資をしてもいいのではないかと、思い始めていた。
結婚が決まったとき、今までの我慢してきたものが爆発したのか、定期を解約して、エステに行った。

「黒川が!?」
「うん、だめだったかな……?」
「まさか! すごい、すごい進歩だよ」