「なにをしているんだ!」


…先生?


「成瀬!成瀬!」

「あっ、はい!すみません!」


涙を拭きながら答えた。


声が頭に入ってこなかった。




「おっ、ちょうどいい!みんなに紹介する

 前に学校を一緒に回ってくれ。やってく

 れるよな?」



やってくれるよな?ってやんなきゃだめじ
ゃん。



「任せて!せーんせ!」


あやめがノリノリで答える。
そのとき小声で



《お前泣いてたけど大丈夫か?》


とはるきが心配してくれた。


《うん!大丈夫!》


と私も小声で返す。


「じゃ、よろしくな!」


と先生は職員室に戻っていった。








先生が去り私は聞いた。


「名前はなんて言うの?」


知りたくてたまらなかった。



「風海 はるき」

やっぱりちょうどいい低さの声をしている
風海君はまだ続けた。



「君は?」

内容は短い質問。
でも嬉しかった。


「成瀬 あき

 よろしく。」


返答はとても短く「おう」だった。





それからは、はるきと風海君。私とあやめ
でわかれて歩いていた説明はほとんどあや
めがしていた。





『キーンコーンカーンコーン』



放課後…
あっ、早く帰ってvisionの準備しな
きゃ!




『カタン』
私は席を立った。


「あき!じゃーな!」



教室でちはるが叫ぶ。
周りがざわざわする。あ〜面倒だな。


「バイバイちはる!風海君もバイバイ!」



巻き込んでごめんよ風海君。
でも周りが面倒くさいんだ。
そして歩き出す…進まない。


風海君が腕を掴んでいた。




「バイバイ」




そう私に言って教室を出て行った。


不器用な人なのかもと思った。




「あき!帰ろ!」



やっとあやめの帰る準備が終わったみたい



「17時にあきの家行くわ!」



楽しみなのか校門をでてすぐに走っていっ
た。




私より早く教室を出たはずの風海君が目の
前を歩いていた。


そうだ声をかけよう




「風海君!」




風海君は驚いて振り向く。
そして、優しく微笑む。
教室でも笑えばいいのに。




「風海君の家どこなの?」



近くかもと思いつつ聞いた。


「丘の上」


風海君はそう答えた。
ふと昔話を思い出した。
でもありえないとかき消した。


「どこの丘?」




するとこの町で1番高い丘だよ。
と答えてくれた。




「風海君は兄弟いるの?」






この質問に風海君は考え込んでいた。





そして出た答えは







「いるけどいない」





いるけどいない………

なんか気になる。













不思議なまま風海君と別れた。