作家たちの話

真美たちのクラスでは、総合の授業でトンカラトンのことを教えられた。

話を聞いている内に体調が悪くなった真美は保健室に行った。帰りの会が終わる頃までカウンセリングを受けた。

「皐、授業途中だったから今から……」
「大丈夫です!その話はお母さんから聞きました!」

リュックサックを背負い、先生を押し退けて保健室を出る。
校舎内を走る真美は、体調不良で休んでいたとは信じられないほど速かった。

早く!私は対処法を知っている!もしかしたらトンカラトンを殺せるかもしれない。

生きている人間なら真美は罪に問われるだろう。
しかし、そうでないなら人を殺すような存在を撃退したことになる。きっと他の人も感謝するだろう。

トンカラトンは生きている人間ではない。真美はそう思っていた。

あんなケガで自転車には乗れないはずだ。それに、あんな犯行で警察が捕まえられないのはおかしい。

大丈夫、あいつは遅い。走れば追いつける。
愛子が殺された場所に近づいた。真美は走るのをやめて歩く。

しばらく歩いたがトンカラトンはいない。そのまま進み、真美は赤信号で止まる。

トンカラトンが出る時間や場所は決まってないの?もし総合の授業で教えられていたら……と考える。すると、残って先生の話を聞いていればよかった……と後悔した。

帰ろうかな。
引き返そうとした時だった。

カラカラと自転車の音がする。

あいつだ。

白い人が近づいて、大きく見える。

「トンカラトン!」

急に叫んだ真美は、周囲に訝しげな目で見られる。
手提げカバンの中の包丁を取り出し、柄を握りしめる。

通り過ぎたところを刺す、または、すぐ横に来たところを刺す。中途半端に前にいると、斬られる可能性がある。

トンカラトンがすぐ近くに来た。
振りかぶり、頭に突き刺して確実に殺そうとする。


真美は、胸を一文字に斬られた。

その直前に、言えとは言っていない、と聞こえていた。

血が飛び散り、真美の体は倒れこんだ。

悲鳴が響き、横断歩道を渡ってきた人が救急車を呼ぶ。しかし、助からないと薄々わかっていた。

トンカラトンは人を殺したばかりなのに、速度を上げずに進む。

真美に注目する中、一人だけトンカラトンを目で追った。
買い物帰りの子供はトンカラトンが見えていた。


トンカラトンは見えない人と見える人がいる。理由はわかっていない。

トンカラトンに、トンカラトンと言え!と言われた後に言えば助かる。
言わなかったり、言われる前だと殺される。