澤風が口裂け女を見たというのは、三丁目の、鉄屑が置かれている場所の近くだった。
三鉄通りという商店街があり、その向こうに交番がある。そこに向かって逃げるらしい。
疾風は口裂け女のことを何だと思ってるんだろう?口裂け女に追いかけられたから助けて、なんて言っても信じてもらえない。
普通の生きている女の人と思っている?それとも妖怪と思ってるけど警察に助けてもらおうとしてる?
口裂け女に捕まったときのことより、警察に言った時の反応の方が怖くなってきた。怒られたらどうしよう……。
古いプレハブ小屋の陰から見る。口裂け女は出てくるのか……何もなかったら時間が無駄になるけど、出られても困る。
「今何時?」
「五時四十一分」
「六時……いや、五十分までねばろうぜ」
疾風は猫じゃらしの葉を握りしめた。皆、立ちっぱなしで疲れたから座っている。
「……!おいっ」
疾風が何かを見つけたようだ。九月の後半に真っ黒なコートを来て、マスクをつけた女の人だ。黒く長い髪が輪郭を隠している。
「マスクだしコート着てるけどさ……黒じゃん」
「でもこんな時期にコートなんか着ないだろ!」
女の人は僕たちに気付いていない。疾風はプレハブ小屋に体をくっつけるようにして女の人を見る。
女の人が動いた!カバンに手を入れ、何かを探している。その時、疾風がビクッと動き、プレハブ小屋に当たった。
グルッとこっちに振り向く。女子と僕ともう一人の男子は悲鳴をあげて走り出した。
「みぃーたぁーなぁー!」
女の人はマスクを放り投げた。顎まで裂けた口で、見えるはずのない奥歯を覗かせている。
遅れて疾風たち二人も逃げ出す。
錯乱状態になって、ただ商店街に向かって逃げる。
「疾風ぇ!べっこう飴!」
「うわぁ!どこだ!?見つからねぇ!」
落とさないよう奥に押し込めていたため、取り出しづらくなっていた。
走りながら取り出すのは難しく、口裂け女との距離はどんどん近くなる。
「誰か持ってねぇのかよ!?」
疾風が泣きながら叫んだ。
べっこう飴なんて持ち歩かない。こんなことになるなら、一人一個ずつ持っておくべきだった!
疾風が転んだ!
僕は思わず立ち止まった。口裂け女は鎌を振り下ろそうとした。
駄目だ!殺される……!
「やめなさい!」
女の子の声が聞こえた。凛とした声だった。
白いワンピースに腰まである真っ黒な髪。口裂け女の腕を掴む少女の手は、不健康そうな色だった。
「その子を殺したって、あなたは変われない。意味はないの」
悲しそうな声だった。さっきの綺麗な声と同じ人なんだ。
口裂け女は手で口を隠した。女の子が手を離すと、鎌をカバンの中に戻す。
あの子は何者なんだ!?あの口裂け女を止めるなんて!?
三鉄通りという商店街があり、その向こうに交番がある。そこに向かって逃げるらしい。
疾風は口裂け女のことを何だと思ってるんだろう?口裂け女に追いかけられたから助けて、なんて言っても信じてもらえない。
普通の生きている女の人と思っている?それとも妖怪と思ってるけど警察に助けてもらおうとしてる?
口裂け女に捕まったときのことより、警察に言った時の反応の方が怖くなってきた。怒られたらどうしよう……。
古いプレハブ小屋の陰から見る。口裂け女は出てくるのか……何もなかったら時間が無駄になるけど、出られても困る。
「今何時?」
「五時四十一分」
「六時……いや、五十分までねばろうぜ」
疾風は猫じゃらしの葉を握りしめた。皆、立ちっぱなしで疲れたから座っている。
「……!おいっ」
疾風が何かを見つけたようだ。九月の後半に真っ黒なコートを来て、マスクをつけた女の人だ。黒く長い髪が輪郭を隠している。
「マスクだしコート着てるけどさ……黒じゃん」
「でもこんな時期にコートなんか着ないだろ!」
女の人は僕たちに気付いていない。疾風はプレハブ小屋に体をくっつけるようにして女の人を見る。
女の人が動いた!カバンに手を入れ、何かを探している。その時、疾風がビクッと動き、プレハブ小屋に当たった。
グルッとこっちに振り向く。女子と僕ともう一人の男子は悲鳴をあげて走り出した。
「みぃーたぁーなぁー!」
女の人はマスクを放り投げた。顎まで裂けた口で、見えるはずのない奥歯を覗かせている。
遅れて疾風たち二人も逃げ出す。
錯乱状態になって、ただ商店街に向かって逃げる。
「疾風ぇ!べっこう飴!」
「うわぁ!どこだ!?見つからねぇ!」
落とさないよう奥に押し込めていたため、取り出しづらくなっていた。
走りながら取り出すのは難しく、口裂け女との距離はどんどん近くなる。
「誰か持ってねぇのかよ!?」
疾風が泣きながら叫んだ。
べっこう飴なんて持ち歩かない。こんなことになるなら、一人一個ずつ持っておくべきだった!
疾風が転んだ!
僕は思わず立ち止まった。口裂け女は鎌を振り下ろそうとした。
駄目だ!殺される……!
「やめなさい!」
女の子の声が聞こえた。凛とした声だった。
白いワンピースに腰まである真っ黒な髪。口裂け女の腕を掴む少女の手は、不健康そうな色だった。
「その子を殺したって、あなたは変われない。意味はないの」
悲しそうな声だった。さっきの綺麗な声と同じ人なんだ。
口裂け女は手で口を隠した。女の子が手を離すと、鎌をカバンの中に戻す。
あの子は何者なんだ!?あの口裂け女を止めるなんて!?



