作家たちの話

「口裂け女とあの子」
僕の学校ではある噂でもちきりになっている。

「聞いたか!?一組の澤風が口裂け女見たってよ!」

「えっ、それで……」

「気付かれないようにその場から逃げて助かったらしい!」

友達の笠山 疾風(かさやま はやて)が興奮した様子で話す。

口裂け女は走るのが速く、追いかけられたら逃げられない。逃げられたのは陸上部くらいだ。

澤風は今大勢の人に囲まれているんだろうな……。
めんどくさそうだ。僕は見ても他の人には言わない。

「なあ樹、今日の帰りは口裂け女がいたところに行かねぇか?」

「えー」

捕まったら鎌で切られるのにわざわざ見に行くなんて……と思う。でも、僕は疾風に逆らえない。友達が他にいないからだ。出来るだけ断りたくない。

「わかったよ」

「よし、決まりだ!念のためべっこう飴はあるから安心しろ!」

疾風は親指を立てた。そして走り去り、他の子も誘う。

べっこう飴は口裂け女の好物で、これに気をとられている間に逃げる。
子供が逃げたことにも気付かなくなるほどべっこう飴が好きなのかな?

見つかったらべっこう飴の効果が見れる。実際に口裂け女がいれば、だけど。


帰りの会が終わった後、校舎に一番近いサッカーゴールに集まる。

疾風に誘われ、来ることになった子たちがきゃあきゃあと騒ぐ。これじゃ見つかってしまいそうだ。

もっと静かで、口裂け女にも怯えなさそうな子はいなかったのか?できれば走るのが遅くない子。

でもそうなると僕は足手纏いになってしまう。走るのは苦手だ。
口裂け女がいませんようにと曇り空に祈る。横では疾風が大量のべっこう飴を見せびらかしていた。