あれは二十年前、六才の時。
妹の彩花(あやか)が産まれ、お母さんと産まれたばかりの妹のお見舞いに行った時のこと。
私は病院の中庭でまだ咲いていない桜の木の前にあるベンチに座り一人で眺めている女の子を見かけた。
私は何故かその子のことが気になり一人でその女の子がいる桜の木まで行った。
「ねぇねぇ、桜好きなの?」
きっかけは桜の木、話しかけたのは私からだった。
「桜はあたしの木なの。」
「どう言うこと?」
「あたしサクラって名前なの。吉野 桜(よしの さくら)。だから桜はあたしの木。」
「そうだったんだね。私は咲間 春花(さくま はるか)。よろしくね。」