幾度読み返しても嬉しさが止まらなくて、いい加減にして帰りなさいよ、と自分に言い聞かせて電源ボタンをオフにした。


ステキな人だなぁ……島さんて。
やっぱりマコト君とは雲泥の差がある。



「あーあ、彼女になりたーい!」


電車がホームに入ってくる騒音に乗じて叫んだ。
すぐ側にいたおじさんが、ギョッとして背中を仰け反らせても平気。
るんるん気分で電車を降りて家へ帰ると、私の部屋では弟の賢太がリスの相手をしてやってる。



「……何してんの?」


また勝手に人の部屋に入って。


「何って、チョロの相手に決まってるだろ」


「チョロ?」


「このリスの名前。母さんと二人で考えたんだ。やっぱり名前付けないとシマリスじゃあんまりだよねって話になってさ」


こらー、レンタルしてきたのは私なのに。


「チョロとか言うの止めてよ。名前付けたらダメって言われてるのに」


「たった一週間だけなんだろ。リスも覚えたりしないって。なぁ、チョロ」


リスは賢太の声に鼻をひくつかせながらケージ内に渡らせた木の上を行き来してる。
何気に懐いてる感があるだけに、余計に歯痒さが募る。


「とっと出てってよ!賢太は立ち入り禁止!」


この子は私と店長さんとの架け橋なんだから、邪魔者は去れ、だ。


「何だよ〜。姉ちゃんの帰りが遅いから遊んでやったんだろ〜」