島…君をレンタルしたいカナ

母は家庭を支えるのが一生懸命で、保険のセールスレディをしながら私と賢太を学校へ通わせてくれた。

多少なりとも父の保険金があったお陰で今があるから、同じようにいきなり家庭の大黒柱が亡くなった時の為の手助けがしたい、というのが持論。

働き続けてきた母を助けてやりたいと思って、なるべく大きな企業への就職を果たした賢太。


二人とも立派なんだ。
しがないパートなんてしてる私とは比べものにならない。



「だけど、落ち込まないって決めたもん!」


お父さんが生きてる時に約束した。
「花奈はいつか大きな花を咲かせる!」って。



「今の所、咲かすことも出来てないけどね」


ははは…と虚しい笑い。
あーマズい。
なんか落ち込んできたかも。


「…ううん!人生はいつだって今からだから!」


マコト君と別れてもそう思って仕事へ行った。
だから、また気持ちを奮い立たせて頑張ろう。


「取り敢えず、今日のリスちゃんを写メっておくか」


スマホを取り出してシャッターを切る。
クリクリした目が一瞬驚いて大きくなった。


「ゴメンね、驚かせたね」


成り行き上だったけど、やっぱりレンタルしてきて良かった。

もう少し仲良くなれたら、店長さんにも自分の家の事情を教えてもいいかもしれない。


その時は同情してくれるかな。
してくれなくてもいいけど、大変だったね…とは言ってもらいたいかな。


「あわよくば俺と結婚を……なんて、ありえないかー!」


バカバカ…と頭を叩いて笑った。

マコト君と別れて一カ月。
やっと心からの笑顔が戻った。