「ごめん。本当に悪いと思う。でも、頼むから何も聞かずに別れて欲しい」


こっちに向けて下げられた旋毛を見つめて嚙み砕く。

味なんてどっかに飛んで行った。さっきまでは確かに美味しいと思うような味付けだった筈だけど。



「…………何で?」


ゴクンと塊を飲み込み、出てきた言葉はやっぱり何故という疑問。


「言えないんだ。カナには本当に悪いと思う。でも、もうこれ以上は付き合えない」


俯き加減でハッキリとした理由も言えない人と付き合ってたの?私。

最初はなし崩しの様に始まった交際でも、段々楽しくなってきて、今では彼のこと以外、誰も目にも耳にも入らないほど好きだと言うのに。


「そんなの聞かされて『はい、そうですか』と割り切れると思う?私達、先週付き合いだしたばかりでもないんだよ?もう二年なんだよ?マコト君が熱心に言い寄ってきて、それに私が落ちてから二年にもなるの!」


分かってるよね!?…という気持ちで言い返した。
頷く彼の方は、十分理解してるような顔つきではある。

きっと今日は、出会った時から今のセリフを言うチャンスを窺ってたんだ。
時々ふっ…と考えては、重そうな息を漏らしてたもの。


泣き出しそうになる私の両手は、既にフォークもスプーンも放り出して脱力してる。