姉ちゃんと亮くんの間で何かあったらしい。

よく分からないけど、姉に亮くんを押し付けられ、押し付けた本人はコテージに戻ってしまった。

いや、よく分からないというのは嘘だ。

姉は自分とは違い、昔から顔に出やすく、わかりやすい。

顔が少し赤みを帯びていたことから、何かがあったらしい。

俺に亮くんを押しつけて帰ったのも、おおよそ亮くんにその赤くなった顔を見られたくないのだろう。

よく忘れられがちだが、姉ちゃんと亮くんが幼なじみのように、俺と亮くんも幼なじみだ。

幼い頃は、3人でよく遊んだものだ。

まぁ今思えば、“亮くん、姉ちゃん、そしてついでに俺”感が半端なかったような気がしないでもない。

いや、事実きっとそうだったのだろう。

いまは、亮くんだけが姉ちゃんにベッタリな気がするが、幼い頃はお互いにそうだった。

いつまたそうなるか分からないから、今のうちに亮くんと話しておくのも得策か。

などと考えながら、亮くんに向き直る。


「じゃあ行こっか」


亮くんは姉の後ろ姿をしかと見送ってから、歩き出す。

本当にこの人は姉ちゃんこと大切なんだな。


姉の後ろ姿を心配そうにずっと見ていたこの人は、こっちに戻ってきてから、なんだか様子がおかしい。