数週間後の朝、亮ちゃん家族と会い、レンタルした7人乗りの車に乗り予約してあるキャンプ場まで、車を走らせた。

私の隣には右側に亮ちゃん、左側に弟の裕也(ユウヤ)が座っていた。

あんなことがあってから、私は少し気まずく思っていた。

だって、安心したからといって、結構長い時間、亮ちゃんの腕の中におさまっていたんだよ?

思い出すだけで顔が熱くなる。

もしかしたら、襲われたことよりそっちの方が強く残っているかも。


「美咲ちゃんどうかした?」

私がボーっとしていると隣の亮ちゃんが話しかけてきた。

「えっ!なんでもない!
どんなキャンプ場なのかなって思っていただけだよ」

焦って、考えていたことをごまかした。

「そっか、よかった。
酔って具合が悪くなったのかと思った。

美咲ちゃんグミ食べる?」

「う、うん。ありがとう」

亮ちゃんのバックから取り出されたグミは、幼いころ私が好きでよく食べていたグミだった。

偶然かもしれないのに何を期待しているんだろう。

「美咲ちゃん小さい頃、このシリーズのグミ好きだったよね。
特にぶどう味のこれが一番好きでよく食べてた。
今でも好き?」

「あ、うん。今でも好きでよく食べてる……」

なんでおぼえてんのよ。

なんで喜んでんのよ、私!

「あ、裕ちゃんも、食べる?」

「うん、食べる」

そーいえば、裕也と亮ちゃん久々の再開なのね。

この前、亮ちゃんが家に挨拶に来た時、裕也は塾に行ってて会ってなかったんだっけか。

裕也はどう思ったんだろ、今の亮ちゃんを見て。

もともと無愛想なこいつは私とは違って感情が見えない。

私と足して2で割れたらよかったのに。

今日も変わらず無愛想な弟と、イモメンになって帰ってきた幼なじみの間に挟まれながらそう思った。