亮ちゃんの鼓動が聞こえる。


あぁ……あったかい…………。

さっきまであんなに怖かったのに……。


「りょ……ちゃん」

あれ、うまく喋れない。

嗚咽が喋る邪魔をする。

震えといい、涙といい、動揺して今の自分が分かってなかった。

私を見つけ出して、助けてくれた。


「……ありが…とう……!」


消え入りそうな声しか出なかった。

言いたいことの半分も言えない。

それでも十分伝わったみたいだった。


「うん……」


その返事が少し潤んでいたから。


私の涙が止まったら亮ちゃんはそっと腕をほどいた。

触れていたところが熱い……。

私にはもうさっきまでの嫌悪感はなかった。

逆に亮ちゃんの温もりと私の熱だけが支配していた。

亮ちゃんは優しく私の手を引き、歩きだす。

沈黙を保ったまま、私たちのマンションを目指して。