やっと美咲が落ちてきたであろう場所まで来た。

多少、迂回してきたから少し時間がかかってしまった。

自分の激しい呼吸音と、心臓の音しか耳に入ってこない。

ここへ来る途中から雨が振ってきてしまった。

山での雨は寒い。

俺は走っていて熱いが、あの急斜面を落ちてケガを負ったであろう美咲の体温が奪われていかないか心配だ。


「美咲! いるなら返事をして!」


あたりを見渡すと、美咲のカバンが落ちていた。

美咲の姿はない。

ここから移動したんだろうか。

移動できたということは大きなケガはしていないのか?

移動した方向を示す足跡など、何かないか地面を見るとカバンから少し離れたところに、片足を引きずりながら歩いた跡のような足跡を見つけた。

このバックがある位置からのびた足跡だと思われる。

雨が降っていたから、足跡がつきやすくなっていたらしい。

そこは雨に感謝すべきだろうか。

名前を呼びかけながら足跡をたどって歩いていくと、人影のようなものが見えた。