「…話は聞いたよ。僕なら、なんの問題もない。
むしろ、人間らしさを身につけるにはいいチャンスになると思う。」


ドアの影から顔を覗かせたリヒト。
どうやら、最初から話を聞いていたらしい。


「雛乃がわからないことは教えてくれるんでしょ?
流石に僕でも初対面の人の名前やきまりまではわからない。」

「うん。」

「…その話が決まったとして、転入生と雛乃が常に一緒にいるのは違和感だと思うけど。」


確かに、それはそうだ。
テストプレイをするって事はリヒトの客観視のデータは私が取らないといけないってことだから、出来る限り一緒に居ないといけない。

それに、多分、リヒトみたいなかっこいい人がクラスに来たらそれはもう大変なことになるんだろうな…
ただでさえ地味な私が常に側に居るとなると…

考えただけでも恐ろしい。


「そこら辺は大丈夫だ。
親戚という体で話を通すようにしてもらってる。」


…お父さん、その設定は無理があるんじゃないかな…
私とリヒトは親戚に見えるほど似てないし…


「…博士、僕と雛乃はあまり似てないから、遠い親戚ってことにしてもいい?」

「それは君たちに任せる。
とにかく、上手く学校生活を送ってくれればいい。
期間は夏休み明けから3月までの二年生の間だけだからね。」

「わかった。
僕も高校生活というものに興味があったんだ。
どんなものなのか体験できるのはいいことだと思う。」


リヒトは思ったより乗り気みたい。
でも、私は…あんまりいい気じゃないのが本心。
リヒトが来ることで女子の視線が冷たくなる、そうなるのが目に見えていて、やっぱり怖い。

でも、それを悟られないように無理やり笑顔を作ってその場をやり過ごした。