「と、とにかく一号く…リヒトの取扱いについて重要なポイントだけ説明するよ。」

「…うん。」


なんか今、無理やり話を逸らされたような…
納得がいかない…
ムッとして再びお父さんを睨みつける。

しかし、お父さんはさっきまでのおちゃらけた雰囲気から一転、急に真面目な顔をして話し出した。
釣られて私も真面目な顔になる。


「さっき渡した紙を見てほしい。
まず、長時間水に浸けること。急激な温度変化のある場所に連れて行かないこと。8時間に1回家で充電すること。
この3つを必ず守ってくれ。」

「うん。」

「…それだけ。
後のことはリヒトが自分でなんとかしてくれる。」


…お父さん、これってそんなにかしこまって言う事なの?
それにわざわざこのためだけにプリント一枚作ったの?

無駄に枠で囲ってあったり、キャラクターに吹き出しつけたり…って要らなくない?

口頭で伝えられて十分覚えられるよ…


「…本当にリヒトのテストプレイ、引き受けてくれるんだよな?」
  

黙っているのを否定と勘違いしたのか、今更若干慌てだすお父さん。


「え、あ、うん。思ったよりも取説が簡単だったし。」

「引き受けてくれるのか、そうか…よかった。
ああ、そうだ。もう一つ話さないといけないことがあるんだった。」

「なに?」


間を置いたあと、確認するようにお父さんは言った。


「このテストプレイが終わればリヒトのデータはリセットされる。父さんはリヒトのデータを元に改めて人型アンドロイドを作るつもりだ。
それでもいいんだな?」

「…うん。分かった。」


この時の私はまだテストプレイの事を『実験』としか思っていなかった。
後に、この約束が自分を苦しめるとも知らずに…