私とリヒトの間に微妙な空気が流れ始めた、その時。

「そうだ!
親戚ってことにするなら多少の思い出があってもいいんじゃないかな。思い出の場所はここ、とかさ。
久しぶりに会って遊んだとか。そのほうが本物っぽい!」


お父さんは閃いた、と言わんばかりの勢いだ。


「夏休みなんだし、二人でどこか行ってきたらどう?」

「“思い出作り”に、ってこと?」


リヒトは思い出作りと言うものに興味があるみたい。
いつも無表情なその目に少し好奇心が見える。


「そうそう。二人は学校で一緒に居ないといけないんだし、もっと仲良くなる必要があるよ。うん。」


一人で言って一人で納得するお父さん。
リヒトも思い出作り、と一人ぶつぶつ呟いている。

それにしても、いくらアンドロイドとはいえ、男の子と二人でどこかに出掛けるなんて初めてだ…
こんな事になるなら彼氏の一人や二人くらい作っておけば良かったなぁ。

“二人で”という言葉を妙に意識している自分がいる。
その事に気が付いて私の心臓はいつもよりうるさい。


「雛乃?さっきから固まってどうかした?」

「えっ、ううん、なんでもない。」


まさか、「デートみたい」って思ったなんて言えやしない。
適当に笑って誤魔化す。