Fisの音が君に伝わるまでの時間

「良かったな、間違えられて」

「心臓に悪すぎる…」




一瞬フリーズしちゃったもん、あたし。








「夏川さん、読み間違えてごめんね」




後ろから、先ほどあたしの心臓を止めかけた声が聞こえた。






「いえ!気にしてないですから」

「そっか、ならよかった」





本当にさっきは落ちたのかと思って、正直泣きそうだった。







「あぁ~、もう!泣かないで!!」

「うう、うぅ……せん、ぱい…」





音楽室の入口近くで藤崎先輩と、泣いている人が見えた。







「岡崎先輩…」




その泣いている先輩は、トランペットパート2年生の岡崎星奈先輩。






岡崎先輩もすごく上手くて、練習の時からずっと落ちないって思っていた。







「先輩…!」

「行くな」

「へ?」




岡崎先輩の元へ行こうと足を踏み出した時、黒川があたしの腕を引っ張った。






「俺達が声を掛けても先輩からしたら皮肉に聞こえるかもしれない」

「…そっ、か…」

「今は藤崎先輩に任していいんじゃねぇ?」




黒川は口が悪いし意地悪ばっかりしてくるけど、こういう気遣いはすごいと思う。







「…離してよ」

「何で?」

「何となく…」

「じゃあ離さない」

「離せ!」

「やだ」





…何なんですかこの人。