グラブはないけど、カイはいつもの様に構えて、そして真っ直ぐに投げた。


――ガシャン!


そして、カイの投げた球はバックネットに強く当たる。


「はっ…早~」


こんな近くで見た事ないから、凄さがいつもより感じる。


何か、一人占めした気分。


「どうだ?満足したか?」


「うん……ねぇ、このボールもらっていいかな?」


「はっ?何で?」


「えっと…カイがここで投げた記念に?」


「あっ…アホかっ!それに誰かの忘れ物なんだから、取りに来るかもしれねーだろっ」


「あっ…そっか」


「おまえには、ちゃんとしたのやるっ」


「えっ?」


「来年の甲子園出場が決定した、優勝のウイニングボールだっ」


「えっ!?そんなの私もらえないよ、それに…いいの?そんな大きい事言っちゃって?」


「アホか、大きいぐらいでいいんだよっ、夢は」


「そう…」


カイは自信ありげな態度でそう言ったけど、私は本当に優勝できて、ウイニングボールをもらえたら…何て思った。