そのコートの向こうで、君が待ってる。




「希子、最近スパイクすごくいい!」





風華が、声高く言うのが聞こえた。
時間を確認するふりをしてちらっと見ると
風華が、希子に抱きついていた。







…そういうの、気持ち悪いんだよ。







抱いた不快な感触を飲み込んで、
耳を澄ませた。
どんなお世辞を言うのか、
興味があったから。




「そんなことないけど……ありがとう」





希子がさらっと笑う。
それに、風華が張り付けた笑みを浮かべる。








やだな。
いつもいつも、女子はそう。
顔か、体か。








自分の武器を分かっていて、
それをどう使うかに、人間性が出る。
露骨に使うも、丁重に使うもその人次第だ。








あんなに露骨にやって、反応を見る風華は
何なんだろう。








希子が、結愛に呼ばれて
反対コートに行く。







選ばれた、6人が入れる場所。
大して強いわけでもないこのチーム内で
補欠…ベンチっていうのは、
すごく、嫌。







もっともっと、違うはずだったのに。
何で、私はあそこにいないの?
こんな惨めなところで、立ってるの?