「パス!」
「はいっ」
二人組で散らばっていく人の中で
私はいつもやっている風華から離れて
ストレッチをしている影に近づいた。
「相手、してください。お願いします」
勢いよく頭を下げたら、
ポニーテールにした髪が額のところまで下がった。
顔を上げたら、驚いた顔が私を見つめていた。
なんで、私に?
いなくなる結愛じゃないの?
その顔はそう言っていた。
でも、私が今パスをしたいのは
風華でも結愛でもない。
「嫌じゃなければ、ねぇお願い希子」
少し戸惑いの色を浮かべた二つの目を
なるべく真剣に見つめる。
強くなりたいから。
だから、だからこそ希子なのだ。
風華みたいに媚を売ることや
認めていて尊敬していてあなたの味方みたいな
そんなことは出来ないけれど。
それでも。