「まあでも、冬季まではいるんだ、だからそこまでは協力してやっていっていこう」




 
監督がフォローして
結愛がまた皆を見回す。

  
      


「私抜きで冬季はやってもらう。いなくなる人に執着しないで」





  
「じゃあ、センターはどうするの?」






希子が聞いて美野里が 
ベンチが入る他にないでしょと笑う。







私と風華の間にあまり良くない雰囲気が流れる。
部員たちに値踏みされている気がした。









「これからの練習は主にスタメンの相手側にも入ってこのチームの精度をあげていくから」







いつになく真剣な声にみんなが背筋を伸ばす。








私は、納得いかなかった。
私の前を行く高貴なその姿は
私をおいて違うところに行ってしまう。








もう、私と彼女の格差は
広がりきったということだ。









……なら。
私は、いなくなる彼女の二の舞にならない。
けれど、センターのポジションは手に入れる。
彼女の行くチームと対戦することはないかもしれない。







違う。
彼女の行くチームは、相当レベルが高い。
運よくかみあえば、当たる。







そう思ってるからこのチームの精度を彼女は上げる。
自分と対させる為に鍛えるのだ。

 

その自分勝手な彼女の願望のために舞うのは嫌だけど、
彼女のチームと対したとき、
私は、やっと彼女との間にある薄い膜を
破れる気がした。






彼女を相手に、私はスパイクを決めて見せる。
彼女の言った本気を出す。







私は、ここに残るけど
彼女は残らない。
だったら、彼女がいなくなった世界で
私はプレーをするしかないんだ。








そして、きっと。
結愛が待ってるのは、ここの誰でもない私だ。
煮え切らない私を解放して自分と対峙させる。
それが、結愛の行く理由のひとつだ。








なら、私はそれに答えるしかない。