「ちょっと、何?」




いきなり過ぎて訳がわからない私の前には
普段から想像できない結愛がいた。





いつも優しそうに垂れている目は
一直線にややきつい弧を描き、


いつも緩んでいる口許は
1文字に結ばれていた。




対人をやっている皆には、私の表情しか見えていない。






結愛は、本当に真剣な表情をしていた。
だからこそ、私は怯えてしまう。
何を、されるのかと。






「今日の試合、夏希はちゃんとセンターで出る」





「う、うん」





練習試合だから、1、2回は入ることを期待していたから
あまり聞いて驚くような話ではない。






「希子と交代で入ってもらう。もうそろそろ、本気だして」




言われた意味が、分からなかった。





「本気って……どういう意味?」






これまでの練習は、全部本気だ。
本気で取り組んで、本気でレギュラーになりたくて。








少しはたるんでいた時があったかもしれないけど、
今はそんなことない。
しかも、今更なんでそんなこと言うんだろう。





今のメンバーでいる方が、平穏なのに。
本気を出せなんて、そんな見くびられていたなんて。







「私は、待ってる」





理解が追い付かず、私はもう既にいつもの顔に戻った
結愛を遠くからぼーっと眺めていた。







本気を出せ。



……私は、もう本気だよ。
あなたになりたくてなりたくて、
本気なんだよ。