試合をする学校までの距離は、
郁と過ごすことで一人は免れた。





良いのか悪いのか、今日は皆力んでいる。
練習試合相手があまり勝ったことのない
同じ区の学校。




レフトにハーフの背の高い子をいれていて
これがなかなか厄介なんだ。






中に入っていなくて応援してることが多いと
いつの間にか、他の学校の隙や、特徴、弱点が
見えてきたりする。







でもそれは誰にも言わない。
同じチームであっても、もう別に勝っても負けても
良くなった。






私個人には、関係ない、と。







体を適当に伸ばし、風華との対人を開始する。
彼女の強みである、高身長が頼りなげに動く。




   

暫くすると、スタメンの人に
ひとりひとり結愛が話しかけているのが見えた。






皆が皆、慎重な面持ちで頷いている。
いいな。
また、ベンチか。







黒いモヤモヤと共に彼女から目を反らすと
なぜか、私の名前が呼ばれた。





「夏希」





すっと澄んだ声が淡い色で笑っていた。






何も言えない私を前に、首をかしげて
ふわっと微笑む。






「ちょっと、話そう? 風華、ごめんね?」






いやいや全然私は大丈夫!
甘ったるい風華の声を受け流して
結愛は私の手を掴んだ。





「ちょっと、隅でいい?」





掴まれた腕は、温和な表情と反してものすごく痛かった。