「三浦杏桜さん、どうぞ」
白い壁に囲まれた空間。
この診察室は、何度来てもなれる事は無い。
「さて。最近は何か変わったことはない?」
ゆっくりとそう聞いてくるのは、12歳の頃からお世話になっている主治医の波野先生。
「何もないよ。いい加減検診減らせんの?」
この検診のために、学校を早退するのが苦痛でしかない。
少しでも数値が良くなければ、すぐに呼ばれてまた学校を抜ける。
そして、いつも小さな恐怖との隣り合わせ。
「再発なんて、してないよ」
「それは検査してから考えることや。何も無いなら検査しておいで」
そう。私は少し前まで小児がん患者だった。
あの夏の、あの日。