「なぁ、いつも見てるよな。誰か目当てでも?」


きっかけは、その一言だった。

目当ての人なんて、いるわけではない。

強いていえば...


「野球が、目当て。です...」

「ふはっ、変わった子やなぁ!中学生??」

「や、1年生です...この学校の.....」


その、少し関西弁の混じる声に、あぁ、グラウンドとはこんなに違うんだ。と、そんな印象を受けた。


「ほんなら、もうちょっと近くで見てみぃひん??」

「え、どういう...」

「なぁ、野球部で、マネージャーせぇへん?」


ナンパかよ。一瞬だけ、そう思った。

返事に困っている私。

野球は好きだ。大好きだ。

幼い頃から、ずっと見てきたスポーツ。


「あ、勘違いせんとってな。ナンパやないで?これは、スカウトやから」


まるで私の気持ちを汲み取ったからなのだろうか。

彼はそんな風に冗談交じりに言い、でも真剣な目を向け、どこかイタズラそうに笑った。


「佐山さん、何してんすかー!ナンパしないでくださいよ〜!」

「ちゃうわぁ、そんなことせんわ〜!ほんなら、次の試合9月の最終日曜。10:30からこのグラウンドで。って、知ってるか。それまでに、マネするんか、せんのか教えてな!」


佐山さん。というその方は、私に親指を立てて、待ってるから!と言いながらみんなの元へ戻っていった。