「な‥なんなんですか!?泥棒ですか!?私お金持ってませんよ‥今なら警察には言わないのでお引き取りください!」

人って本当に困った時や焦った時、言葉が出てこなくなるタイプと饒舌になるタイプの二種類に分かれるとなにかの本で読んだことがあったが、私は後者の方であると確信した。

「あ〜警察呼ばれたら困るんだけど、まぁとりあえず座ろうか。」

ここは私の家のはずなのに、如何にも彼の家であるかのようにリビングへ誘導され、ソファーに座らされる。困った、ケータイは二階だ。母にケータイは携帯しなきゃ意味がないじゃないかと以前心の中で激怒したことがあったが、あの日に戻って訂正したい。人間、いざという時に携帯をケータイ‥あれ?ケータイを携帯‥そうだ、ケータイを「ねぇ、俺の話聞いてる?」

「スミマセン、ナニモキイテイマセンデシタ」

「何でカタコトなの。」

はっはっはと声を出して爽やかに笑う姿を見て、悪い人ではないように感じた。

「‥コホン。では、改めまして。
‥‥‥‥はじめまして。」
さっきまでの笑顔とは違って、優しく穏やかに。

「俺は君の兄貴だよ。」

よろしく、と彼は呟いた。
その言葉の意味を私は理解出来ないまま、ぐるぐると考え続けたんだ。