「ぶっ 性悪だとよ ひどい言われ様だなーっ
有明が言うからさらにまた良いよなぁ
よく言った有明 」
集まっている私達4人の後ろからグリーンのネット越しに笑いをこらえながら誰かを挑発するような声
私の体が一瞬で固まる
冷たい汗が背中に伝う
「あ、奏人! お疲れ様〜結果は残念だったけど奏人凄くかっこよかったっ!」
そんな私の様子に気づくこともなく、菜々が先ほどの不機嫌はどこへ行ったのか後ろを振り返って可愛らしく声をかける
「おー、次はぜってー負けないから また期待してろよ」
笑いあう菜々と中川
その2人の様子はどこかから切り取ってきた絵のように完璧で、先程まで中川に群がっていた子達との圧倒的な差を感じさせられる
菜々にはきっと誰も敵わない
それを今、確信犯かどうかは分からないけど彼女達は周りに示しているのだ
そんな綺麗な2人の微笑ましい光景とは裏腹に
相変わらず怖くて後ろを向けない私は下を向いてキツく結んだ靴紐の結び目をじっと見ていた
「咲希、なんでそっち向いたままなのー?照れてんの?」
朝陽が能天気な声で尋ねる
『…ちょっと次の試合用にボールとってくる。』
そういってバレーボールの入ったワゴンに走り出そうとすると
「自分で手に持ってるわよ、咲希」
美帆の冷静な声が私の手元に向かって飛んでくる
指先に意識を向けると
自分の指先にボールの丸い感覚がある
ぽとり、と力の抜けた手からボールが落ちてころころと床を転がる
そして、
「…誰が性悪って。」
感情の読みとれないワントーンの声が背後で響いた
