河口さんはうつむいたまま、でもその目からは涙が伝っている
多分、菜々達は髪を伝うジュースの雫に混ざって、彼女が涙を流していることなんて気づいていないだろう
河口さんの足元に広がるみんなの飲み捨てたカラフルなパッケージがひどく美しいと思った
私の感性は歪んでる
突っ立ったままの河口さんに、周りから揶揄の言葉が飛ぶ
菜々の決めたことは絶対だ
一瞬にしてこの教室から河口さんを排除してしまった
私達が直接手をくださなくてもこれから河口さんは他の子達にもいじめられるんだろう
「おー、なんだよ?みんな突っ立って、なんかあったのか?」
「あっ! 奏人〜!」
さっきまでの残酷な表情はどこへ行ったのか、菜々がいつも以上に優しく微笑んだ先にいたのは、サッカー部の朝練から帰ってきた中川 奏人がドアにもたれて笑っていた。
